現代アートのコレクションを構築することは、単なる美術品の購入にとどまらない。
感性と知識、そして長期的な視点が融合するプロジェクトであり、そのプロセスそのものが豊かな体験となる。
さらに、資産価値のあるコレクションを目指す場合には、戦略的なアプローチが必要だ。
本稿では、資産性の高い現代アートコレクションを構築するための指針を解説する。
まず第一に、現代アート市場のトレンドを把握することが不可欠だ。
アート市場は、株式市場と同じくダイナミックに変動し、ある時期に注目されるジャンルや作家が移り変わる。
そのため、最新の情報に触れることが重要である。例えば、世界中で開催されるアートフェアは、現代アート市場を理解するための絶好の機会だ。
アート・バーゼル(スイス、マイアミ、香港)、フリーズ(ロンドン、ニューヨーク、ソウル)、アーモリーショーなど、各地で開かれる国際的な大規模フェアでは、世界中のギャラリーが選りすぐりの作品を展示する。
これらのフェアを訪れることで、写真や画面越しでは得られない作品の魅力や質感、作家の意図を体感できる。
他にもシンガポールのART SGや台北当代などのアートフェアも一流のギャラリーが出展しており、要チェックである。
アートのトレンドや情報はデータでは読み取れず、「見る」という経験の蓄積であると考えてよいだろう。
また、作家のキャリアとポテンシャルを評価する方法について触れよう。
コレクションを資産として考える場合、単に好きだからという理由で購入するのではなく、その作家が今後どのように評価される可能性があるのかを見極める必要がある。
作家のこれまでの展示履歴、受賞歴、美術館でのコレクション状況、批評家の評価などを調査することが重要だ。
特に若手作家は、将来性が高く、初期の作品が手頃な価格で手に入ることが多い。
しかし、中堅やすでに評価が定まっている作家の作品も、安定した資産価値を持つ場合があるため、検討の対象に入れるべきだ。
さらに、信頼できるギャラリーやディーラーとの関係を築くことも大切だ。アート市場には、プロフェッショナルなギャラリーやディーラーが多く存在し、彼らはその道のエキスパートとしてコレクターをサポートする。
ある程度の信頼関係を築けば、通常は市場に出回らない作品や特別な条件での購入が可能になることもある。
また、彼らは作家のキャリアを熟知しており、作品の来歴や真正性を保証することができる。
よい作品を早い段階で手に入れようとするなら、信頼できるギャラリーやディーラーとの関係性を築くことは必須なのだ。
多様性を意識したポートフォリオの構築も、資産価値を高める鍵となる。
一つのジャンルや作家に偏ることなく、絵画、彫刻、写真、デジタルアートなど、幅広い形式を取り入れることで、リスクを分散させることができる。
特に現代アートの世界では、常に新しい技法やメディアが市場で注目を集めることとなり、これらの中から購入する作品を検討する価値は高い。
最後に、自分自身の感性を信じることを忘れてはならない。
資産性だけを追い求めると、アートコレクションの本来の楽しさや意義を見失うことがある。アートは感性への投資であり、心から惹かれる作品を選ぶことが、長期的な満足感につながる。
そして、自分自身が真に価値を感じる作品は、結果的に市場でも高く評価されることが少なくない。
現代アートのコレクションを構築することは、知識と感性を育てながら、人生を豊かにする旅のようなものだ。
その過程で得られる発見や出会いは、金銭的な価値を超えた喜びをもたらしてくれるだろう。